人生 転機の日 4部作  最終章 [原点]

アジュンマふきこ

2011年11月19日 01:10

 その日は 朝から 雨が ぱらつく空模様だった。 途中で 降りだすかもしれないと思って 傘を 準備して 家を出た。

 アジュンマが 小学生の頃の とある夏休みの日の ものがたり 

 その日は 学校の 花壇の 水かけの当番にあたっていた。 水を何遍も ジョオロにくんで 3年梅組のところの 花壇に 水かけをしていたら、 案の定 雨が ぱらぱらと降り出してきた。傘を持ってきていてよかったな と思って、 左手で 傘を差しながら 水かけを 最後まで 頑張った。

 真っ赤なサルビアが 雨に濡れて 鮮やかだった。 自分の 背丈程もある でっかいひまわりが 久しぶりの雨に 元気を 取り戻して 大きい口で笑っているようだった。 真夏の暑さと 雨の 取り合わせは なんか とても好きだった。 夏の雨は 本当に 気持ちがよかった。

水かけが やがて終わりにかかった頃、 宿直室のおじさんが ちょうど通りかかって 
 「雨の日は 水かけを やらなくていいんだよ」  「早く おうちにお帰り」 って教えてくれた。 

雨が降っているから そうだねっ と おもって、 私は おじさんに ありがとうと 言った。

 お花さんにも もう大丈夫だねって  思いながら おうちに 帰った。





 おうちに帰って おじさんの話をすると、 父は あきれて さもおかしそうに げらげらと 笑った。 私も つられて 少し笑った。 母も 仕方なさそうに ホホと笑った。 姉は ものすごく 馬鹿にして なにか言った。 

 その日の 夜  「夏休み計画表」の、 ○月 ○日 「学校の花壇の水やり」 と書かれている欄の マス目に マルと 大きく書きいれた。  絵日記には おじさんのことを書いた。
 
そして 雨の日の時は マス目に バツをつけるのかなと 気になった。
×の時は、 先生 雨のせいって 分かってくれるかなと 心配になった・・・・





   < 原点に先立つ きざし >
  
 アジュンマが 幼稚園生の頃の  もうひとつの ちいさな ものがたり
 
 楽しみにしていた運動会の日のことだった。 
いよいよ 「旗ひろいかけっこ」 の出番が まわってきた。 
私たちは 赤や青や黄色などの 色のついた 旗を一本 それぞれ手にもって よーい、ドン! で いっせいに スタートした。 途中に 赤や青の旗が 置かれているので、 その中から 自分の旗と 同じ色の旗をみつけて それを拾って ゴールしなければならない 競技だった。
 
       私が持っていた 旗は 水色だった。 

 旗が 置かれているところに 到着したら、 水色の旗はなかった。 みんなは さっさと拾って ゴールしているのに、 私は 私の旗だけがなくて 困って うろうろしていた。
 すると 先生が駆けつけてくれて、 それから 青色の 旗を拾ってくれて、 「これでしょう!」 といって 私の手に持たせ、 一緒に ゴールまで 無理やり 私を引っ張っていってくれた。

 先生に 色が違うよ といっても 先生は なんにも言ってくれなかった。
水色と 青色の 旗は 重ねたら おんなじ色じゃなかった。 
おんなじ色の旗じゃないのに どうして ゴールしていいのか 不思議で 絶対 わからなかった。

  会場からは オヤオヤ みたいな 拍手がきこえてきた。

 走り終わって 父と 母の方を 見たら 父は 呆れた顔をして ニヤッと 口をゆがめて 愛想笑いをした。 母は ちょっと 失望したような 悲しそうな顔をしていた。

運動会からの帰り道 「旗の色が違っていたのに」 って言っても、 父と 母は私の話を 信じてくれなかった。 姉は なんか やいやいと 言っていた。

 木綿で 作られた旗は 月日とともに 色もあせるだろうし、 あとから買い足した旗の色は 色も鮮やかな上に 微妙に 色目も 違うことだろう。 

こうしたことを 理解したうえで 真っ青も 色褪せ水色系も 同じ青という概念で 結論付けることが どうして 幼稚園児に できるだろうか!? 
 
真っ赤も 色褪せ ピンク系も おんなじと思って 走る テーゲー(おおざっぱ)さの方が 賢いのだろうか !?

      
いずれにせよ あの幼稚園事件以来 私は 家族の中では 信頼を失った。 
 



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